いざ洞内へ
せっかく隊長がアクアシューズまで用意してさそってくれたので、渋々一緒に入坑することにした。(ホントに渋々だよ。だって足を濡らすの、イヤだもん。それに、奥には何が潜んでいるか分からない。コウモリ男爵やゲジゲジ侯爵はともかく、KAZU氏が山中で見つけた「透明美人」の仲間が潜んでいたらどうしよう…!)
いくら洞内をライトで照らしても、奥の方は全く見えない。手持ちのライトもヘッドライトも、そしてカメラのフラッシュも、全く光が届かない。水は澄んでいるものの、ゴミが漂っていて、あまり気持ちのよいものではない。ここをホントに行くのか〜。

果てしない闇に向かって、とうとう行くことにした
0m地点
荷物を外に置き、恐る恐る足を水に入れた。
チャポン・・・(足を水に入れる音)
ヒャーッ! ちべたいッッッ!
な、何て冷たい水なんだ。

この辺りまでは以前長靴で入ったことがある
10m地点
水深はおよそどの地点もこのくらいである。ほとんど膝小僧まで喫水がきているので、普通の長靴では水が入ってきてしまう。川釣り用の腰まである長靴なら完璧であろう。

少し歩くとこのように水が濁る これが後々困ることに…
30m地点
突如として靄が坑内に立ちこめた。この辺りだけ空気中の水分が多いのだろうか。それとも湧水の源泉がこの辺りにあるのか。

なぜか急に靄が立ちこめた 水気が多いのか?
40m地点
坑内は、素堀の部分とコンクリート巻きの部分とでできている。地盤が強いか弱いかでこうした違いがあるのだろうが、よく分からない。早急にトンネル工法の勉強をせねばなるまい。

水はきれいなのだが、靄が…
50m地点
このまま靄が晴れなかったら、撮影がままならない。困った…。穴菌戦士、ピーンチ! である。

このまま靄が立ちこめた中を行くのだろうか 不安が心に湧き上がった
60m地点
路盤から1mほどの高さまでは、角石の石垣によって坑内が補強されている。そこに、ちょうど人が腰かけることのできる幅がある。その上に、たくさんの白い碍子が残されていた。ある程度は電気工事も進んでいたようだ。

碍子だ! しかし、電線は見当たらない
75m地点
水は冷たく、澄んでいる。しかし前方にたくさんのゴミが浮遊している。いずれも軽い発泡スチロールの類だ。坑口から風に吹き寄せられてここまで流れてきたのだろうか。しかし山中にはありえない発泡スチロールゴミである。誰かが坑口まで持ち込んだとしか考えられない。

うっ、おびただしい量のゴミが浮いている でもなぜここに?

発泡スチロールだ これからも朽ちることなく浮き続けるのだろう
80m地点
前方に、土砂の堆積しているのが見えた。果たして越えられるのだろうか。それとも行き止まりか? ここまでなのか?

ここか、ここまでなのか!? その先はどうなっている?
70m地点
今来た方をふり返ると、坑口が暗闇の中にぼうっと蒼い円となって浮かんでいる。何だかとても不思議な光景だ。

蒼い月か、いや蒼い幻灯機の光か…
75m地点
ここの崩落はかなりの土砂を坑内に積み上げている。乗り越えるしかなかろう。

かなりの量の土砂が堆積している ちょっと恐い…
しかし越えられないほどではない。ごつごつと鋭角の断面を持って私たちを待つ土砂の山を、慎重に越えていく。さあ、これからさき、坑道はどのくらい続いているのか。

乗り越えて行こう でも慎重に
90m地点
土砂の山は、坑内の湧水を完全に分かつ役目を果たしていた。再び膝まで冷水に浸けようとした時、これまでよりも細かな浮遊物が多量に浮いているのが分かった。ここからは水が汚れているのだろうか。ちょっと嫌だナ〜。

浮遊物が少し気味悪かった
しかしそれは杞憂に過ぎなかった。水面にこまかな灰燼は浮いているものの、水中は相変わらず澄んでいる。複線のトロ軌道用に造られた軌道敷も直線をもって続いている。

浮遊物はきれいな水の表面をわずかに覆っているだけだった
110m地点
浮遊物は減ることがなく、静かに水面を漂っている。前方に、両翼から土砂がせり出しているのが見えた。でもまだ行けそうだ。冷たい水も、ようやく平気になってきた。

隊長は常に周囲の観察を怠らない
120m地点
両側からせり出した土砂のある部分を超えると、三たび坑内は石巻きの補強がなされていた。補強のない部分は地下水の湿潤によって弱くなり、こうして崩れ始めているのだろう。

何度こうした落盤地帯を越えただろう
いよいよ落盤の規模が大きくなってきた。いっそのこと坑内全面を巻き石で補強すればよかったのに、それはできなかったのだろうか。

巻き石のある部分は効果を上げているのに、槽でないところはこの有様だ
130m地点
ここまでだいぶ歩いてきた。隧道全体の難文のいくつ来ただろうか。もしかしてこのままホッパーのあるところまで到達するのか。入港前の恐怖も、湧水への不安も今は消え、この先の様子を見たいという気持ちが大きくなってきた。

行けるぞ、まだまだ! もうだいじょうブイ!
いつのまにか水面の浮遊物はなくなり、水はますます蒼く澄んでいるように見えた。

水が再び澄んできた ストロボの光を反射して美しい
140m地点
と、前方に再び発泡スチロールなどのゴミが浮いているのが目に入った。
坑道の中央部分が深い青色になっているのは、2つの軌道敷の間に位置する溝である。排水溝なのか、そこだけ一段深いので、蒼さも増して見えるのだ。

中央部分の深みに嵌ると大変だ
145m地点
しかし浮いているのはゴミだけではなかった。土砂が…、いや、土砂は浮いてはいない。相当の重量をと質量を持って坑内を埋めている。また落盤地帯のようだ。

また浮遊込みか いや、待て…
しかし今度の落盤は、これまでのそれとは異なっていた。
ここで幻の寝姿山のトンネル坑内は、一気に変容を見せる! 次号を待て!
「寝姿山のトンネルの事実〜その3」に続く
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