葉

深良用水隧道に入る〜その3
参加 2008年8月10日   
 
落差1.5mの謎
 とうとう来ました。箱根側と深良側から掘り進めた隧道が出会った地点です。

 資料によりますと、「わずか1.5mの誤差は当時の技術水準からすれば驚くべき僅かな差でしかない」という“誤差説”があれば、「水勢を弱めるために意図的に落差を作ったのだ」という「意図説」もあります。

では、画像をご覧になって、ご判断ください。

この段差を越えるには、左の壁際を行きます。なぜか全線を通じて左側通行のようになっているので、自ずと皆さんは左側を通ります。掘削時からその様に掘ってあったのかもしれません。


        特に怖いところではありませんが、慎重に降ります 9:42

この段差は中央が1.5mの落差を持つ滝になっており、その左には3段ほどのごつごつした岩場があります。皆さん、慎重に足をのせて下に降ります。



私は降りる前に自分の足元を見てみました。立っているところは箱根側隧道の端、そしてその先が用水の落下地点です。



子ども達が来たので、下に降りて全体の様子を見ました。1.5mの落差は、このように作られています。


           6年生の子ども達の身長と段差を比べてみてください 9:44

 意図的に作られたと思われるV字形の水路は、おそらく江戸時代以来、手を加えられていないように思います。私としては誤差とは言えないように感じました。両側から掘り進めた合流点としての価値を付加するために、計画してこのような形にしたのではないでしょうか。

 また、もう一つ、加筆することがあります。この合流点は、直線上にないのです。計測してはいないので感覚で言いますが、離れたところから掘られた2本の隧道が、120度ぐらいの角度を持って接続しているように思います。ですから、下から見ていると、歩いてきた子ども達がいきなり右側から姿を現すように見えるのです。


       合流点を少し離れたところから見ています

 深良小学校の子ども達とは、ここでお別れです。子ども達の乗ってきた大型バスは、湖尻峠から深良に下りる道の幅員が狭いために通行できないので、この先にある深良水門側に迎えに行けません。そこで子ども達はここで折り返し、箱根水門に戻って帰宅するのです。

子ども達のいなくなった隧道には再び静寂が戻り、まだ慌てているコウモリが行き場所を求めて飛び交っていました。



隧道後半を歩く
 まだまだ合流点を観察したかったのですが、他の人たちがどんどん行ってしまうので、しかたなく追いかけることにしました。


            合流点を後にして先を急ぎます 9:49

 コウモリの赤ちゃんコロニーがところどころに見られました。これほど多いのは、隧道内にいる羽虫や蛾を捕食しているからかと思いました。事実、手にした明かりには、無数の羽虫が集まってきました。ヘッドライト式の明かりを点けていたら、それこそ困っていたことでしょう。


             コウモリ赤ちゃんの群生

 隧道は深くなり浅くなり、色々な変化をみせます。杖を持ってくるように言われたのは、足元の起伏を探りながら歩くためであることが分かりました。


             ここの水の流れは速いです

 流れが緩やかなところでは、痩せた魚を見ることができました。マスかブラックバスか…。彼らは日の当たらないこの隧道内で暮らしていたのでしょうか。それとも芦ノ湖から押し流されてきたのでしょうか。


        魚が行き場を失ったように虚ろに泳いでいました 9:53

このように水量が豊かでゆったりと流れているところもあります。まさにいろいろな顔をこの深良隧道は見せてくれます。


            ゆるやかに流れる用水路の水

750mの札が下がっていました。まだあと530mあります。かなり長い感じがします。


          ここまでで半分以上を歩いたことになります 9:55

 自分の足元を見てみました。膝の上まで水が迫ってきています。場所によってはもっと深いところがあるので、一緒にいった参加者からは「パ○ツまで濡れちゃった。もう泳いでいこうかしら。」という声も聞かれました。


         深いですが、水は冷たくないので大丈夫

隧道内に異変
 (もうかなり歩いたな、まだ出口に着かないのだろか…)と思う頃、隧道内に異変が現れました。何だか汚いコケのような異物が岩にへばりついています。これは何でしょう。あまりいい気持ちはしませんでした。


        汚れが目立つようになってきました 10:01

坑道の天井が高くなっているところがありました。隙間を埋めるように、岩が詰め込まれています。落盤防止の措置なのでしょうか。


            岩がぎっしり詰め込まれています

このように天井が高いのは、ここが岩盤の裂け目ということなのでしょうか。


         見上げるように高い裂け目があります

1100mのプレートがありました。あと残り180mです。実は、まだそんなにあるの〜、という感じもします。


         写真に撮るのは難しかったです 9:44

出口に近い空気穴です。はっきりと冷たい空気が流れ込んできているのが分かりました。


    出口まではまだだいぶあるのに、空気が降りてきています 10:16

汚れがいっそう目立つようになってきました。


         白い結晶のようなものも見えますが…、何?

とうとう1200mのプレートがありました。もうすぐ出口、深良側坑門があるはずです。


          ここまで長かったです 10:18

 出口が近いことを示すわけではないでしょうが、覆坑された部分がありました。昭和になって補修された部分でしょうか。


          覆坑された部分がありました 10:20

 ちょっと雑のような感じのする覆坑のしかたですが。


           岩盤が弱いところなのでしょうか

いよいよ深良側出口へ
 1250mのプレートがありました。出口はもうすぐそこにあるはずです。長かった…。


     関心の尽きない隧道とはいえ、ここまで長かったです 10:25

覆坑に木材が用いられているようです。


       覆坑にはあまりよい材料を使っていないように見えました

覆坑は、40mほど続いて途切れ、また岩肌が現れました。


         資材が乏しい時代の工事だったのでしょうか

と、前方に明かりが差しているのが見えました。深良側坑門に着いたのです。とうとう深良用水隧道を歩いてくぐったのです。感慨無量です。


       怪しい人影は、向こう側から来た見学者です 10:26

前方が明るくなり、やがて円形に切り取られた外の景色が見えました。ここが深良側の出口です。


              ようやく深良側坑門に着きました 10:30

時刻は午前10時30分。箱根側坑門に入ってから1時間19分後のことでした。

   「深良用水隧道に入る〜その4」へ続く
                                             
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