資料『下田街道』によりますと、茅原野から南下した下田街道は、目金地区の辺りで左岸の切り立った岩壁を南に迂回して進んでいる部分があります。もちろん対岸の目金の集落を通る道もあったでしょうから、わざわざ高いところを通ることもないのですが、昔の道は標高の高低はあっても真っ直ぐに進むことが多いので、こうしたルートをとったのでしょう。
清水堂(しみんど)
さて茅原野から歩を進めますと、国道の右は稲梓川、左は切り立った岩壁になります。
今では落石防止ネットで覆われていますが、年上の元同僚に聞いた話によると、
「この辺りは“しみんど”と呼んでいて、冬にはよくつららを取りに遊びに行ったものだったねえ。」
ということでした。
ちょうど「あずさ気まぐれ売店」のある辺りを「しみんどう(清水堂)」と言うらしく、どうやらかつてはお堂があったように想像されます。その印に、売店の向かいに、お地蔵様や常夜灯が並んでおり、飲料水にもなる湧き水が勢いよくホースからあふれています。この水がわき出ている砂防ダムの上に、数年前まで「花筏」の木がありました。葉の中央にぽつんと花や実をつける、珍しい植物です。今回はその存在が分かりませんでしたが、絶えてほしくないものです。
清水坂(しみんざか)
国道が開通したという昭和23年まではこの辺りがどのような道だったかは分かりませんが、地元の人たちから「しみんざか」と名付けられているので、ここから街道が山に入ったことはほぼ間違いないと思います。
「気まぐれ売店」から箕作方面に50mほど進みますと、農林事務所の倉庫があります。その隣から、国道を離れて山に入る細い道があります。
画像で国道から外れて左に登る道が分かりますが、でも少し行くと、道は消えてしまいます。今回は、薮こぎをしながら登っていきました。

左に上がっていく道が見られます
幻の題目塔を探す
『下田街道』の地図には、この山中に題目塔があると記されています。今回の探索の目的は、その題目塔を探すことでした。
ちょうど登る前に地元のおじいさんに会ったので情報を得ようとしましたが、清水堂のお地蔵様のこと以外は知らないようでした。
それでしかたなく登っていったのですが、以前、東海バスに乗ってここを通った時、山中に何か祠のような物があるのに気づいていたので、たぶんそれだろう、と見当をつけていました。バスの座席はアイポイントが高いので、気がついたのです。
わくわくしながら歩を進めていき、目金の集落から須郷の方面を見渡すことのできる地点にたどり着きますと、それはありました。

おや、あれが題目塔でしょうか…
祠を建てて守るなんて、信心深い人がいるんだな、と胸を熱くして覗いてみました。しかし! いざ中を見てみますと、これは…! 祠の中にもう一つの木祠がありました。

立派な祠の中に木祠が納められていました
がっかり〜と思って中を見ますと、「大地神」というお札が納められています。もちろん地元の人が祀ったものと思われますが、どのようないわれがあるのでしょうか。
道が出現!
では題目塔はほかにあるんだな、と思ってさらに南下しました。すこし標高を上げますと、なんと、立派な道があるではありませんか! おやおや、これは…と半信半疑のまま進みました。当然、題目塔もこの道ばたにあってよいはずです。胸は高鳴ります。

あれぇ? 立派な道があります これは…
しかし、ずっと進んでいきますと、のり面に崖崩れ防止の吹きつけが施された箇所に出ました。ここから先は崖が切り立っており、国道には下りられません。どうやら今来た道は、この吹き付け工事がなされた時の資材運搬用のクローラ道だったようです。がっかり。

ここから先は歩行不能です
では、題目塔は…?
さて、この後さらに標高を上げて30分ほど山中をさまよい、題目塔を探しました。しかし、残念ながら見つけることはできませんでした。本当にあるのでしょうか。いえ、きっとあるのです。資料『下田街道』には写真がないのですが、地図に赤丸がつけてあるので、存在するのです。次回はもっと範囲を広げて探すことにしましょう。執筆されたSs木先生にも伺ってみる必要がありますね。
注:後日、Ss木先生に伺ったところ、資料『下田街道(静岡県教育委員会)』に添付された地図に記載されている題目塔は位置が違っている、ということでした。題目塔は、「あずさ気まぐれ売店」のすぐ向かいにあります。
また、この清水坂は、2007年の道路拡幅工事によって削られ、なくなってしまいました。(2008年5月追記) |