葉

石造物について
    市山の馬頭観音
    天城湯ヶ島町市山の馬頭観音 正月を迎える前、きれいに飾ってもらっています

 下の2枚の画像を見てください。私は古道や石仏・塞の神・道祖神に関心を持ち始めてからその関係の書物を読むようになったのですが、ある本に「東伊豆の片瀬の浜には、剣と縄を持った塞の神があり、大変貴重である。」と書かれていました。写真まで載っています。えっ、待ってください、片瀬は私の生まれ育った土地です。そんな道祖神様があったかなあ…と思って心当たりを思い浮かべました。そういえば浜地区から坂を少し上ったところにお地蔵様のような石仏を祀ったところがあったっけ…と、記憶に浮かんできました。そこで、しばらくしてからその地を訪れてみました。そこには果たして写真と同じ神様がおられました。うーん、ここは私が小学校から中学校までの9年間を毎日通った道です。どうして気がつかなかったのでしょう。いいえ、もちろん当時は石仏に何ら関心のない子どもでしたから無理はないのですが、身近なところに貴重な歴史の遺物が安置されていることも知らず、9年間もその前を歩いていたということを、ちょっと恥ずかしく思いました。

     東伊豆片瀬の道祖神
                  東伊豆町片瀬にて

 ところでこの神様が持っている剣と縄には、どんな意味があるのでしょうか。調べてみるときっと興味深い理由が分かることでしょう。その向かって右の神様は、実物をよく調べると双対神の塞の神様であることが分かるそうで、これも伊豆には珍しい神様だそうです。
 いずれにせよ既に風化が進んでおり、お姿さえはっきりなくなりつつありますが、これからも大切にされることを祈るばかりです。
 
 その下のもう一枚の画像は、やはり書物を読んで気がついた塞の神様です。これは、私が新卒で初めて勤めた職場の近くの神社にあります。当時は全く気にも留めなかった神様ですが、あったんですね。しかも表からよく見えるところに安置されています。何だか申し訳ない気持ちになってしまいました。
        
         東伊豆大川の道祖神
                   東伊豆町大川にて


 では、ここで、古道を歩いていると見られる古い石造物について説明します。
 地蔵様(河内)
   左から地蔵様、巡拝塔、馬頭観音が並んでいます
下田市河内にて

   
 石祠
 (せきし)
 家のような形をした、石でできた祠です。高さはおよそ40pほどで、木の扉がついている場合もあります。中にお経を安置したのでしょうか。道の傍らにある場合もありますし、個人の家の敷地内にあることもあります 須郷の石祠
  下田市須郷にて
大日如来
(だいにちにょらい)
 本来は真言密教の最高仏であるところの大日如来様ですが、石柱のような形で路傍に立てられているのは、死んだ牛馬の供養のためにあるのだそうです。その意味では、馬頭観音と願いが似ています。これは、箕作のいんぼ地蔵様の隣にある大日如来です。明治時代の作ですが、江戸時代の大日如来もほぼ同じ形をしています。

   下田市箕作にて
馬頭観音
(ばとうかんのん)
 農作業や行脚に使いつつ、かわいがっていた牛馬が死ぬと、それを弔うために立てたそうです。石柱のような形の物もありますし、観音様のような形の物あります。その場合には、観音様の頭に馬の顔が彫ってある場合が多いようです。(頭の上のお馬の顔が分かりますでしょうか?)

横山坂の馬頭観音
 韮山町南条にて
馬頭観音
(その2)
 観音様の型でない、石柱型の馬頭観音です。これは比較的シンプルな形をしています。 石柱型馬頭観音
    下田市河内にて
巡拝塔
(じゅんぱいとう)

 西国三十三所観音、あるいは四国、板東、秩父の霊場の巡拝を記念して立てた石塔だそうです。昔は、旅をするにも命がけだったそうですので(今も交通事故の危険があるので、ある意味命がけえといえますが)、無事に旅を終えられたことに感謝して立てたのでしょう。
廻国塔
(かいこくとう)

 江戸時代、大乗妙典六十六部を霊場に納める目的で諸国を回ったこと、あるいは廻国の行を続けていることを記念して建立した石塔だそうです。巡拝塔と似ていますね。
河内の廻国塔
   下田市河内にて
庚申塔
(こうしんとう)

 青面金剛を祀っている、守り神だそうです。塔身下部に三猿(見ざる、言わざる、聞かざる)が彫られた場合があるそうです。  横山坂の庚申塔
  韮山町南条にて
庚申塔
(その2)
 右は、天城湯ヶ島町の宿という地区にある庚申塔です。画像では分かりにくいですが、塔の基部の3面それぞれに三猿が彫ってあります。稲梓の光陽院の下にある庚申塔には、基部に三猿のほか、2羽の鶏が彫られています。
 天城湯ヶ島町 宿の庚申塔
道祖神
(どうそじん)
 路傍にあり、行く人の安全を守る神様のようです。お地蔵様や大師様のようなお姿をしたものや、夫婦のように2体並んだ対のお姿のものもあります。道祖神と言えば、遠くは長野県安曇野の道祖神が有名ですが、探せば案外身近なところにもあり、その土地の人に、花をそえてもらうなど大切にされているものが多いようです。が、一方では、道路工事の際に破損したり、何者かによって盗まれてしまう神様もあるそうです。何ともやりきれない気持ちになってしまいますね。 韮山の道祖神
  韮山町中条にて
サイの神
(さいのかみ)
 集落と集落の境目にあり、ここから村に災いが入らないようにと願って立てた守り神のようです。道祖神のような形をしたものや、石祠のような形のものがあるようです。画像は、左が賽の神で、中央の石造物は石灯籠。右は庚申塔です。
 賽の神は、正月に行われるどんどん焼きの火の中に入れられる風習があったそうで、そのため摩滅していることが多いとのことです。
湯が島宿の賽の神
  天城湯ヶ島町 宿にて
宝篋印塔
(ほうきょういんとう)
 石塔のような形をしていて、高さも1メートル前後と、かなりあります。元々は、中にお経を収めていたそうです。保存の良い塔は、形も左右対称で美しいです。 宝篋印塔(河内)
 下田市河内重福院にて
地蔵
(じぞう)
 いわゆるお地蔵様です。昔、その土地に住む人々の無事や安全を祈って、土地の篤志家が立てたようです。右の画像のお地蔵様は、両脇に小さな2つのお地蔵様をお供にしています。 河内の三地蔵様
  下田市河内にて
六地蔵
(ろくじぞう)
 六つのお地蔵様が横に並んでおられるのを見ることができます。六つというのは、死後の六つの世界を表しているそうです。死んだものが行く世界を下から順に書きます。
・地獄(じごく)
  まさに最悪の人間が行く世界です。その恐ろしさはこで 説明するまでもないでしょう。
・餓鬼(がき)
  食べ物を粗末にした人間が行くとされています。ずっと腹 を空かしてさまようのだそうです。
・畜生(ちくしょう)
  生き物をいじめた人間が行く世界だそうです。ここでは自 分が動物にいじめられるそうです。
・修羅(しゅら)
  人の物を盗んだものが行くそうです。
・人間(にんげん)
  可もなく不可もない普通の人間が行く世界だそうです。
・天上(てんじょう)
  よい行いを重ねた者が行く世界だそう です。いわば天国でしょうか。  
六地蔵(河内)
   下田市重福院にて
松尾の六地蔵
    下田市松尾にて
名号塔
(徳本)
 右は、下田市中村にある「徳本名号塔」その昔、徳本上人がこの地を訪れて念仏を唱えたのを記念して、地元に人たちが立てたそうです。当時は徳本様を迎えて人々が大フィーバーしたそうで、あちこちの土地で熱烈歓迎を受け足そうです。 西中の徳本名号塔
   下田市中村にて
                                             
天城湯ヶ島町佐野梶山の塞の神
天城湯ヶ島町佐野梶山の塞の神 いつもきれいにしてもらっています
トップ アイコン
トップ
葉