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日向道を行く
 もう一つの下田街道   
 
 修善寺の小立野で遠藤橋を渡りますと、狩野川の対岸を市山まで行く道があります。これを、「日向道」といいます。西斜面なので日当たりがよいからそんな名が付いたのでしょうか。

それはともかく、こちらもかなり昔から使われていた道のようです。現国道と違って交通量は少ないですが、道幅も狭いところがあるので、車では通りにくいです。こちらにも道沿いに石造物やサイの神があり、昔の面影を残したところがあります。
国道の迂回路となっている面がありますので、通ったことのある方も多いのではないでしょうか。

では、日向道をご案内いたしましょう。

遠藤橋
 湯川橋から小立野に入り、そろそろ道が登りになろうかというところで、左手に橋が架かっています。これが遠藤橋ですが、明治19年に橋が完成するまでは、ここに渡し船があったそうです。
 さて橋を渡りますと、修善寺の柏久保から来た道と合流します。交差するところに大きな題目塔が建っています。

日向のサイの神
 念仏塔の角を右に曲がり、道なりに進んでいきます。辺りはのどかな田園風景が広がり、ほっとする感じがします。
1kmほど進みますと、右に富士屋商店という酒屋さんがあります。その向かい側、畑の一角を祭壇にして、7つの石造物が並んでいます。


               日向の道祖神(年の暮れに撮った画像です)

 向かって左から、サイの神、サイの神、石塔、地蔵、庚申塔、地神塔、サイの神です。右端には、石棒が置いてあります。

 面白いのは、右のサイの神様がてに大福帳を持って、開いて見せていることです。
 年の暮れになりますと疫病神が家々を回って人々の悪い行いを帳面に書き留め、年が明けたら懲らしめに来るからそれまで預かっておくようにと言って、去っていくそうです。サイの神様は、自らその帳面を手にしてどんど焼きの火に入れられて焼かれ、悪さを帳消しにしてくれるというのです。何とも涙ぐましいではありませんか。もっとサイの神様を大事にしなければいけませんね。

日向の馬頭観音
 さらに南に進んでいきますと、ちょうど集落が途切れたところ、道を挟んで右と左に石造物があります。左手の2基は、文政十三年の馬頭観音と昭和四年のそれです。右手の4基は、西国四国秩父板東巡拝供養塔と観世音菩薩塔、馬頭観音です。この先、道は緩やかにS字カーブを描いた後、田んぼの中の一本道になります。


馬頭観音
 日向道の傍らには、時々無縁さんとおぼしき石塔があります。これは何かなあ…、と思って表の銘を読むと墓石であることが分かり、ぎょっとしてしまいます。
途中、道がぐっと高くなって小高い丘を越えるところの手前左に、舟形後背を持つ馬頭観音が建っています。これは、資料『下田街道』には記載されていません。先生方は見落としたのでしょうか。後背に「文政五年七月…」の銘があります。




     見落とされた(?)馬頭観音                       伊豆には珍しい真っ直ぐな道
 
佐野梶山の道祖神
 真っ直ぐな道を進んで道や緩やかに丘を登るところがあります。登りきった所に左後方に折れる三叉路があるのですが、そちらに進んで50mほどいくと、佐野梶山の道祖神(サイの神)があります。いつ行ってもお花が供えてあります。大切にされているんですね。



石祠
 もうすぐ明徳寺、という所の街道左にこの石祠があります。どんな由来があるのでしょう。今度聞いてみることにしましょう。



明徳寺
 日向道の標高が徐々に上がり、県道と三叉路で分かれている地点を左に進みますと、やがて明徳寺があります。
 ここはトイレの神様(お寺ですが)として名を売っており、年をとっても下の世話を人に頼らずに生活できるという御利益があるそうです。
 境内や参道には古い石造物があり、行ってみる価値はあります。また、参拝客も多く、日向道では唯一に賑やかなところといえそうです。うずまさ明王堂は拝観無料で、内部には陽石や陰石、陽木、陰木、賽銭箱、厠などが置いてあります。参拝者はそれらをいとおしそうになでて御利益を願うのです。(もちろん見るだけの人もいますが)




参道の馬頭観音
 明徳寺山門前に、土産物店が軒を連ねています。その南の外れ、お店の前に、実にたおやかで柔和なお顔をした馬頭観音が建っています。光背に、「文化四年(1907)四月吉日」 「為観世音菩薩」と銘があります。お店の人がいつも花を飾っているようです。

お店の中の馬頭観音
 実はこのお店の倉庫の中に、もう一つの馬頭観音があります。こちらは外から見ることができないので、お店の人に頼んで、見せてもらいましょう。高さ1mほど。由来は不明だそうです。



明徳寺名物草餅
 馬頭観音のあるお店の前に、県道に下る歩道があります。
県道への出口が土産物店になっており、そこでヨモギの草餅を売っています。一つ120円で、焼くと130円です。これが大変素朴でおいしいのです。大きさも十分ですし、粒あんというのも私好みです。お茶のサービスもあるので、私はこちら方面に出向いた時はたいてい寄ることにしています。

 
 これから先、下田街道はいったん国道を横切り、複雑な道筋を経ながら天城湯ヶ島の集落に入っていきます。
                                             
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