葉

婆娑羅山に登る
   登頂2003年4月27日
 
 下田市と松崎町の境に位置する婆娑羅山については、登山のために3つのルートがあると聞いていました。 
 その一つは、下田市発行1万分の一の地図に記されている「つくし学園」上から登るルート。もう一つは、婆娑羅旧峠に案内してくれた“道の先生”K氏が教えてくれた「マンダラ上の旧道カーブ」から登るという最短ルート。そしてもう一つが、前稲生沢中学校PTA会長O氏がつい先日登ったという、トンネル上からのルートです。
 地図で確認しますと、つくし学園からのルートははっきり記されているものの、通ったという人の話を聞いたことがないので、今回は見送りました。“道の先生”によるルートは山仕事の人レベルの難しい道かもしれないので、パス。O氏の行った道は尾根筋であり、何よりもつい先日登ったばかりというので、一番信頼できそうなルートです。そこで、今回はO氏の足跡を追って登頂を目指すことにしました。

 取り付きは、旧トンネルの小杉原側出口です。O氏の話により、ここから尾根に向かう道があるとの情報を得ています。(当のO氏は新トンネルの脇から上がったそうです。)
 車を新トンネルの小杉原側出口に置き、歩いて旧トンネルを目指します。旧トンネルの方は現在、産業廃棄物の処理場になっており、あまりよい雰囲気ではありません。おまけに古い重機が放置され、不気味ですらあります。でも仕方ないのでそれらの脇を通り抜け、取り付き口を探します。
 これか?という踏み跡を探してトンネル上部を目指して歩を進めますと、おお、道らしき踏み跡がちゃんとついています。が、これは単にトンネルを越えて向こう側に下りる道かもしれません。気を引き締めていきましょう。おや? 檜の幹に、ピンクのビニルテープが巻き付けてあります。誰か来たんですね。O氏かな? 


    重機のアームが示す方に登山道入り口があります

 用心しながら登ること約5分。峠ですね。ほぼ旧トンネルの真上に出たようです。が、新トンネル方面に伸びる尾根道や、旧トンネルの向こう側(マンダラ側)に下りる道ははっきり認められません。その代わり、婆娑羅山頂を目指すと思われる尾根道はちゃんと見られます。意外でした。登る人は結構いるのでしょうか…。


             旧トンネル上の峠です

 さあ、本腰を入れて登ることにしましょう。地図で読んだところは、ここから尾根をそのまま辿っていけば、やがて標高約600mの山頂に至るはずです。わくわく…。

 辺りは間伐作業をしている最中と思われる檜林です。日曜日のせいか、作業をしている人はいません。稜線の西側には広葉樹も見られます。野鳥の鳴き声が思いの外響いています。思ったより東から吹く風が冷たく、防寒衣を着てこなかったことを悔やみました。ま、着替えはあるので、汗をかけば問題はないでしょう。


         ピンクのテープに導かれて登ります

 先のピンクのビニルテープは、いくつも檜の幹に巻き付けてあります。また、青いタフロープや、赤い布テープも見られます。いずれも2〜3年ほど前のものと見ました。3年前、千葉大学徒歩旅行部がここを歩いた時につけたのでしょうか。当時私のHPを見て「情報求む」と連絡をくれた彼らは、今、どうしているのでしょうか…。

 登り道の斜度は、決して緩くはありません。運動不足の身にはかなりこたえる傾斜です。でも、ピンクのテープに導かれるようにして道もはっきり見て取れます。これは案外山頂まで道は続いているかもしれません。
 

            かなりいい道がついています。

 そうこうして登っていくうち、ちょっとした平らな部分に出ました。婆娑羅山の中腹にはその昔「婆娑羅三摩耶経」を読んで修行した寺があったそうなのですが、ここがそうなのでしょうか。きちんとした資料がないのではっきり言えないのですが、何か遺構でもあればわくわくしてしまいますね、これは。(そんなの私だけか…) ここは、どうやらこのルートの中間地点のようなので、休憩場所としては適切だと思います。でも登っている時は(まだ1/3ほど来た程度だろう)と思っていたのでした。婆娑羅山頂は、案外近いのです。

 さあ、道はまだまだ続きます。山頂はいっこうに見えません。相変わらず山肌に吹く風は冷たいですが、野鳥の声はいっそう賑やかになります。おや、足元には、山菜の「しどけ」が見られるようになりました。3月に藤原峠を歩いた時に、下田歩こう会の人に「これはおいしいよ。」と教えて貰ったのですが、私にはちょっと強烈でした。ふきのとうのような鮮烈な苦みは確かにおいしいのですが、ちょっとアクが強くて…。お陰でお腹がすっきりしましたよん。(謎)


        山菜「しどけ」 かなり強烈な味がします

 ふうふう言いながらさらに登っていきますと、先が急に険しい登りとなりました。こ、これは、このルートで今までにない急峻な坂です。一番の難所でしょうか。さあ、緊張します。でも行ってみようー! 滑りそうな斜面では靴のエッジを効かせ、片方の手を空かせた状態の「三点確保」で越えます。恐いけど、ちょっとわくわくしますね。おや、道が2つに分かれています。が、ピンクのテープは右に導いています。とりあえずそちらに進みましょう。と、そこは、また平らな窪地が広がっています。こここそが修行寺のあった所でしょうか。うーん、でも辺りを探しましたが、それらしき遺構や石造物の名残は見られませんでした。

        急峻な坂を登りますと…                         平らな土地が広がります

 ここでルートはやや東寄りに進んでいます。そう、右に東側の空が見えるのです。足元には、うす紫色のスミレが小さな花をつけています。傾斜は緩やかになりました。ここは山頂の肩の部分でしょうか。半信半疑のまま、テープに導かれるようにして進みますと、もうここより高いところは見られなくなりました。山頂でしょうか?!

 おや、あれは…、何だか檜林が切り開かれて平らになったようなところがあります。おお、標識がありますね。着きました! 婆娑羅山の頂上です。資料で読んでいた通り、檜林に包まれた暗い所です。三角点もすぐに見つかりました。眺望は開けませんが、わずかに加増野のゴルフ場や県道が見えます。意外にも道を行くバイクの音がかなり聞こえます。距離としては近いのでしょうね。車を下りて、ここまで45分かんで来ました。ゆっくり歩いてこの時間ですので、行程としては、大平山の登りの1.5倍というところでしょうか。意外と近かったですよ。大平山のように登山道を整備して山頂の眺望をきかせれば、誘客はできるかもしれません。不思議と山頂付近は風が止んでいました。


                おお、山頂です

        誰がつけたか、山頂の指標                        そして三角点(高さ25cmほど)

 休憩10分。もう下りましょう。国土地理院1/2500の地図に記された池代側に下りる道は、見つかりませんでした。が、テープがつけてなかっただけで、本来はあるのでしょう。このあたりは土地の人に聞いてみなければいけませんね。

 さあ、帰りは来た時と同じ道を辿りますが、テープを見失わないようにして慎重に下りましょう。油断すると迷いますからね。(経験有り)
 一度来た道は早いものです。下りならなおさらですね。25分ほどで旧トンネル上の峠まで来ました。が、ここでそのまま下りたのでは芸がありません。ここは一つ、馬車道の峠まで行ってみることにしましょう。O氏や千葉大の彼らが通ったのですから、きっと踏み跡はあるはずです。

 が、うーん、これはほとんど薮漕ぎですね。ま、行ってみましょう。ここが行けなければ、地蔵山から大平山へは行けませぬー。(何?)

 おお、こちらにもピンクのテープが捲いてあります。これはきっと千葉大のルートファインディングチームがつけたのでしょうね。そんな気がします。でも、うーん、薮漕ぎは時間がかかります。ま、一本道ですから、きっと行けます。おや、これは、テレビの電波中継塔です。ははあ、これが県道から見えるアンテナ塔ですね。どうやら稲梓側からの電波をここで受けて、松崎側に流しているようです。


  県道・小杉原側から見えるアンテナ塔です。NHKの施設のようです。

 さらに道を進みますと、笹などに覆われていますが、かろうじて踏み跡は分かります。でも馬車道峠は遠いですね。もう旧トンネル上から30分近く歩いています。が、とうとう出ました。馬車道の峠です。O氏はここから山頂を目指したとなると大変だったでしょうねー。


        出ました、馬車道の峠です

 ここからは、新トンネルを目指してゆったりと下りました。昨日の雨のため、羽虫のような小さな虫が発生しています。やはりもうそろそろ古道歩きの季節は終わりですね。クモの巣も張りだしているし。蛇が出なかったのは、幸いでした。


         そしてここが新トンネルの真上です

 車に戻ったのは午前11時45分。2時間15分の行程でした。運動としてはちょっときつかったですが、たまには来てもいいかもしれません。ただし、大平山と違って暗い感じの道なので、万人受けはしないかも。途中で誰かと会うことはないでしょうね。

 さてこの後ちょうどお昼だったこともあり、横川の「ふかや」に寄って温泉に入り、蕎麦を食って帰りました。リュックに着替えを入れてあってよかった。ちょっとした大人の贅沢であります。安いもんですね。

 さて、5月の連休で古道歩きは終わり。虫が出ますからね。この週末は、落合−白浜を攻略した後、縄地−落合の残りを歩きましょうか。その後は、HPの標題どおり、下田街道探訪ですねー。

                                             
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