到着!
ここが阿弥陀窟です! 入口の高さは5mほど、幅は僅かに3mぐらいです。その入口では、エメラルド色の海水が出入りしています。
船頭さんは舟の操舵とエンジンの出力を微妙に調整しながら、洞窟にゆっくり舟を滑り込ませていきます。舳先に乗った水先案内の人は、竿を用意して、舟が岩肌に接触しないように用心しています。
海蝕洞に舟が入りました。寄せては出ていく波に、船体が上下左右、ゆらゆらと揺れます。
海蝕洞は、すぐに左に曲がっており、奥に行くほど狭くなっているようです。もちろんその奥の方は暗くて見えません。
こんなにわくわくしたことは、もう何十年もなかったように思います。今、目の前に阿弥陀窟が暗い口を開けているのですから。

水先案内人山が竿を構え、細心の注意を払って洞窟に進入していきます。

奥の方が見えました。皆、頭を低く下げて、その内部に導かれていきます。

「はいーっ、頭をぶつけないように気をつけてーっ!」
案内人さんの声が響きます。

暗い洞内に入りました。

目が暗闇になれるまで、少々時間を要しました。いったいどこに弥陀三尊がおられるのでしょう。

見えたーっ!
「あそこですよ、あそこに弥陀三尊が見えるでしょ?」
と、案内人山が指し示します。
「えっ、どこ、どこ?」
と、みんなが口々に声を上げます。
「あ、見えた!」
「本当だ! 見えたーっ!」
「わああぁぁーーーっ! ホントねえっ!」
「あれが阿弥陀さまぁーっ!? 不思議ィィィーーーッ!」

私にも・・・、見えました! 阿弥陀三尊のお姿が・・・・・!
それは、水面の上に漂う霧ではなく、宙に浮くホログラムでもなく、まして「見える人にだけ見える」幻想なんかでもありませんでした。
洞窟の中央部にいる舟から7、8m先の、洞窟の最深部に近いあたりの左、岩壁のくぼんだところに、ごく小さな3尊のお地蔵様とも観音様ともとれる白い仏像が、大きい順に並べて置いてあります。
大きさは、離れた舟から見て高さ30cm25cm、20cmぐらいの大きさです。
いえ、実際には仏像があるのではなく、光によって作られている像なのですが、でも本当に置いてあるように見えるのです。
思わず船頭さんに
「あれは本当の像が置いてあるんですか?」
と尋ねたほどです。 もちろん船頭さんは
「いや、ちがいます。あれは光です。」
と答えられましたけど。
(あれが阿弥陀三尊! 小さいんだ…) それが驚きと共に私の心に刻まれた印象でした
。しかしまさに立ち姿の観音様が三尊、見えるのです。
どんなお姿かといいますと、自分の右手の平を、指を伸ばして見てください。その親指と人差し指を折り曲げると、残りの中指、薬指、小指が長い順に並びますよね? そのような配置で3尊並んで見えるのです。
残念ながら、写真には写りません。暗い洞窟の中で揺れる舟の上からでは被写体をぶれずにとらえることはできませんし、光の像ですのでストロボを焚くと閃光に溶け込んでしまいます。
後ろの席の人からも「写真、撮れましたか?」と期待された声をかけられましたが、ダメでしたと答えるしかありませんでした。
ここで、なるべく近いイメージを作ってみましたので、お見せしたいと思います。いえ、自分の目で実物を見に行きますという方はご覧にならないでください。私自身も、ご自分の目で見に行かれる方がよいと思います。
イメージはこちらです→<これが弥陀三尊のイメージ> *絵は極端に下手です・・・(^_^;)
案内人さんは手持ちライトで観音さんの場所を示そうとしてくれましたが、バッテリー切れのため、できませんでした。

プチ“蒼の洞窟”
阿弥陀窟の中から入り口の方を振り返ってみました。来る前に、
(ひょっとしたら外国の"青の洞門"のように見えるのではないか?)
と思っていたものですから。
振り返りますと、ちょっとだけそんな雰囲気もありました。手ぶれ防止機能の付いたカメラで撮影したのですが、それでもぶれてしまいましたけれども。

拝観時間はあっという間に過ぎてしまいましたが、私は、阿弥陀さま三尊のお姿を見ることができて、心から嬉しく思いました。それはまさに不思議な神秘さに満ちた体験でした。この三尊を初期の頃に見つけた人は、まさに仏様の御姿に触れた思いがしたことでしょう。

洞窟内にいた数分間、うかつにも観音様を見た驚きと感動のため、一番大切な合掌することを忘れてしまいました。(後で港へと疾走する舟から振り向いて合掌しました…)
舟は完全に阿弥陀窟から出ました。
種明かしをしてはつまらないですが、船頭さんの話では、下の画像の岩壁の中央付近に「鳩穴」と呼ばれる小さな穴が阿弥陀窟まで貫通しており、そこに差し込んだ光が阿弥陀窟の中の壁に当たって三尊の形を作っている、とのことでした。

もう一つの海蝕洞
阿弥陀窟の一つ北に、こういう海蝕洞があります。
「あの洞穴は、波の力によって中が崩れ、奥に浜ができています。あれでも上から見ると30mほどの高さがあります。」
と船頭さんが説明してくれました。

さようなら、阿弥陀さま
舟はどんどん阿弥陀窟から離れていきます。(あ、手を合わせるのを忘れた!)とこの時になって私は手を合わせて一心に願いを祈りました。

同行した皆さんも、名残惜しそうに後ろを振り返っています。

しかしその顔はどなたも心から満足したように晴れ晴れとしていました。
「手石の阿弥陀窟で弥陀三尊を拝む〜その3」へ続く
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